かつて東武鉄道が乱開発しようとしてしそこねた赤城山。その失敗のためにほどよく自然が残されていますが、その赤城登山鉄道(東武興業赤城山鋼索鉄道)駅跡地は、現在は売店とレストラン(というか喫茶室)を兼ねたモノとして使われています。たぶん。営業しているところをあまり見たことがないので、現在もやっているかどうか、いつ営業しているのか、何時から? 何月に? など詳細はわかりませんが。
(地図)
こんなところ、1年に1度行くか行かないかという所なのだが、久しぶりに行ってみたら、あのビールの赤城水系バージョンの水源地だ、と強く宣言する看板が出ていました。へぇー、あまり興味無かったけど、そうだったのか。たぶん、今はもうそのシリーズ無くなっちゃったと思われますが。
レストラン裏は、そりゃケーブル駅裏ということで、今でもケーブルの路盤がそのまま遺されている。ここを約300m下ると、御神水が汲めるということのようだ。
300mと軽く言うけれど、グリコでは一粒300m、明石海峡大橋の主塔が約300m、東京タワーは約332.6m、新幹線のプラットフォームの長さがたぶん約400m。そもそも約300mとは、図面上の平面距離のコトなのか、高低差を含めた実際の距離なのかもよくわからない。この斜面だ、平均45°の傾斜だとすると、実際の距離が平面の距離の約1.4倍くらいの距離になったりすることも……あり得なくない(実際には、最大勾配586‰らしいです)。
……ってなことを真剣に考えるまでもなく、決心だけして下ってゆく。300mって、どんだけかわからないままに。ちなみに、手前の鉄の線が1本延びているのは、ケーブルカー廃業後に敷設されたと思われるモノラック。すっかり使われている雰囲気も無いのですが、御神水を採りに行かれない老人たちのために運ぶモノだったと想像されます。
転倒すれば、なかなか止まれないだろうと思うと、慎重になる。手すりも無い。平野では30℃を超すような日が続いても、ここまであがるとなかなか涼しい。まだ新緑を少しすぎたくらいの緑。あまり脇見をしない程度に、いろいろな植物を眺めながら下っていく。「まだか? うっかり通り過ぎちゃったんぢゃないの?」と思う頃には、階段が草に覆われてしまう。
おいおい、階段終わりかよっ!! と思うと、小さな立て札。ここから階段を逸れる、というコトか。板が岩に渡してあって、その先は岩がゴロゴロ落ちているだけだ。ここ、下るの!! ……と下を見ると、何やら屋根っぽいモノが。あそこが汲み場か、、、と納得して、慎重に下る。ケータイ圏外だし、夕方だし、動けなくなったら朝までここにいなくてはならない羽目になるでしょう。
そして、いよいよ、汲み場に到着です!!
小屋には3つの管から水が流れ出ている。それぞれ「美人の水」「御神水」「智慧の水」とある。だれがどのようにそう決めたのか知りませんが、そのようになっているのならばと、智慧の水をアタマからかぶってみた。それなりに冷たいです。個人的に湧き水を口に入れるとお腹が故障するので、飲んでみませんでした。わりとワイルドな水の味がするそうですが。
近くにあった赤城山御神水の献上についてという立て看板によると、こんなことだ。
赤城山御神水の献上について
赤城山の「あかぎ」の名称の由来については、いろいろ言われているところであるが、あかは色彩の赤色ではなく水をいう説が有力である。
古い地名のあかは水に関係している。仏言の閼伽(あか)よりきたもので、平安朝においても宮廷語で天皇にさし上げる水を「あか」といい、源氏物語の中においてもあかといわれている。
また、「あかおけ」とは天皇にさし上げる浄水を入れる「おけ」をいう。なお「あかる」はその浄水の井戸を称している。
中国よりきた言葉で仏(ほとけ)や貴賓に献上する水のことを、特に「あか」といわれたらしい。
和名抄という本においても「あか」は浄水、功徳水(くどくすい)として漢より伝わったものとされている。
新古今集の中に「朝ごとのあかゐの水に年くれて」という言葉がある。佐野市の赤見(あかみ)も、弘法大使が発見した功徳水が出ているところがのちの世に「あかみ」という地名に変ったようである。
川の源流には、赤倉(あかくら)といわれる地名が多く、赤堀(あかぼり)も水に関係している地名と思われる。
赤城の「あか」も仏や貴賓に献上する功徳水が多く湧出したところで、城(ぎ)は「かこい」、「さく」または器(うつわ)を意味し、功徳水の器という意味であかぎといわれ、後年、赤城になったのかもしれない。
仏前に供える水棚も「あかだな」といわれている。
よって、昔よりいい伝えられ皇族に献上されたというゆえんである。
佐羽家に於いて故飯村侍従より
注:適宜旧字を新字になおしました
何だか、ありがたいんだかどうでもいいのか、よく解らない内容だった。まぁ、山に雨が降ればどこかしらか水が湧くわけです。それについては、充分ありがたみを感じています。
小屋の裏側には、「幸福の水」という立て札が置いてありましたが、実際にはどこにあったのでしょう? どうしたことでしょう? 涸れちゃった? 落石で埋まっちゃった? このあたり、ひどい落石跡だらけなので、落石説を支持したい気持ちはありますが、落石したら立て札ごと埋没しますね、フツーは。
持参した2リットルのペットボトルにありがたく頂戴し、……あの階段を上るんですか!! やれやれ。えらいところまでおりて来ちゃったモノだ。下るだけでも膝が笑いますが、上ると足腰にきます。健脚度A+です。殆どが階段なので、靴はフツーの運動靴程度でモンダイありません。
赤城山御神水の会という、たぶん有志のボランティアチームが管理しているものと思われます。安全などについてはもうまったく全然っていうところですので、汲みに行くには登山と同じで自己責任で行きましょう。
ちなみにこの階段、実際には840段くらいありました。なぜ「実際には」なのに「くらい」になっちゃうかというと、途中でわかんなくなっちゃったからです。
この鋼索鉄道跡をずーっと歩ければよいのですが、途中で崩落しちゃっていますので、全線階段で、というのは無理です。何かの手違いでうっかり再開させようと思ったら、まづはこの鉄道跡を全部ひっぺがさねばならず、それだけでもエラい騒ぎですね。全部鉄製とかだったら、ほぼ無料で入札してくる企業もあろうかと思われますが、大部分がコンクリートのガラになっちゃうので、処分がたいへんそうだ。
ところで、あのビールの水というのは、これが水源として、どっから取水してるんだろう? 結局、利根川?
【リンク】
- 鋼索鉄道の廃線跡に興味を持っちゃったら関東廃線鋼索鉄道
- ハイキングに興味を持っちゃったら鳥居峠 ケーブルカーの廃線跡
- 季節と時間が違うと、景色も違います。赤城山の御神水(アーカイブ)
- 12リットルも持って上がってきたヒト
御神水2Lでゴハンを炊きました。水道水とは歴然の差。美味しいことはアタリマエで、ふっくら度は水道水の1.3倍。1度に4合炊いて3日くらいダラダラ食すのですが最後には黄変米と化すはずが白米のまま。まさに御神水。ちなみに珈琲も淹れてみました。これならスーパーで売ってる珈琲豆も美味しく頂けるのでは?…と思っちゃうくらい味がまろやかにふっくらした次第です。また汲みに行こうかな。と思ってしまう不覚さなのです。