中年よりも若い世代ならば、「おおきなかぶ」というロシア民話の絵本を知っているだろう。小学校で教材として使うこともあるようです。
でも、この「おおきなかぶ」で育つと、実際の様子を間違って憶えてしまっているオトナが少なくない。
この物語の骨子は、
「うんとこしょ、どっこいしょ。まだまだかぶはぬけません」
に象徴されるように、それほどまでに大きな蕪を大勢で力を合わせて抜く努力をするというところにあります。ところが、実際の蕪を見てみるとそれは非科学的で、実際的ではないということがよくわかります。
絵本の画とよく見比べてみて! 実際にニッポンでよく見られる蕪は、土の上に座っている、とか落っこちているという感じで、ほとんど埋まっていません。埋まっているのは先っちょの細ーい部分だけです。でも、老夫婦をはじめ、大勢で引っこ抜こうとしてようやくやっと抜いた、という話の結末を記憶したりしていると、蕪ってずいぶん地中に埋まっているモノだ、と認識しがちです。
教材として使っている学校でも、「どのくらい埋まってると思う?」などと児童に質問して、まるで氷山が海面にちょびっと顔を出していて残りの7割以上が海水中にある……ようなイメージを与えています。もちろん、国語教師が蕪の成長になんて興味があるはずもないですからそんなことおかまいナシなわけです。
この教諭は、「氷山の一角」どころじゃないな。
じつは、個人的には随分とオトナになるまで、やぱし「蕪はだいぶ土中に埋まっているモノ」だと思っていました。それが実際に畑で見たら「蕪を抜く」という作業があっけないもので、驚きました。
この、「おおきなかぶ」のせいです。きっと。
まぁ、カブがデカすぎというか爺さん小さすぎというか、そういうツッコミ所もあるわけですけれども、カブが埋まりすぎ。そして、この記憶で成長すると、蕪ってそういう植物なのだと思い込んでも不思議はないですね。受験にも出ないし。
このことについて、小学校教諭はどのように考えているのか、尋ねてみたい。ま、何とも思わないか。文学が科学で固められている必要も無いし。
受験に出ないし。
ただちに健康への被害は無いし。
どんどん人数が増えて、その増えてくのがだんだん小さくなっていく様子は、ロシアにおけるマトリョーシカの発想が礎となっているからだろうか?
ちなみに、ロシア民話「おおきなかぶ」はいろんな著者がいろんな出版社から発行しているようですが、最も有名なやつは佐藤忠良画・内田 莉莎子訳の福音館書店版ですね(フォトP調べ)。
この佐藤忠良さんといえば、代表作が「群馬の人」なんだけど、その点について学校ではやはり触れられないんだろうなー。受験に出ないし。直ちに健康に影響は出ないし。