要するに「ワンマン運転」の「ワン◎◎」のことです。数あるジャパニッシュ(和製英語)のなかで気になる造語「ワン◎◎」。例えば「ワンマン運転」と言えば、車掌ナシの運転士1人で運転することを表すわけです。
ニッポンでは路線バスでの「ワンマン運転」は日常となりました。さらにこの頃は、都心部と過疎部の一部の鉄道路線において「ワンマン運転」化が進行しているようです。この場合の「ワンマン」は、和製英語なのだが、「ONE」の「MAN」なので、まあ気持ちが解らなくもない。
「ワンマン社長」と言えば、社長って1人であることがフツーだが「事業を独りでごりごり進めていっちゃう社長」のことで、それはそれでやはり「ONE」の「MAN」なわけだ。「ひとつ、よろしく」を英語で言いたくて「ワン、プリーズ!」と言い放つニッポンでは、決してナシではない。
しかし、「ワンマンライブ」は1人とは限らない
たとえば、独立した音楽家・漫談家・舞踏家・ゲージツ家たちがバーターを組むことなくする単独ライブならば「ワンマンライブ」もまあ納得。でも現実的には、2人以上のグループの単独ライブの時でも「ワンマンライブ」なわけで、それってみんな違和感ないの?
グループの若手が「ワンマン目指します!」とか宣言すると、それって独立志望? とか思っちゃうのは個人的なヘンタイ具合が行きすぎているせいだと思いますが、そこを割り引いてもどうももやもやと不自然な気がする。
「ワンタッチ」は「ONE」の「TOUCH」ってことだよねえ?
同様に、ニッポン語において「ワンタッチ」という言葉がある。ワンタッチとは、「一度触れる動作」で完結するという意味で使われることが普通だ。「切替は、ワンタッチ!」と言えば、一度触れればそれで切り替えられるという意味に解釈される。
ところが、あるケータイのワンタッチは、そういう意味では無いらしい。
どうも3タッチ以上に見える。もっと細かく言えば、three (3) touches 以上に見える。これを「ワンタッチ」と呼ぶのは優良誤認表示なんじゃないか? 他の語、たとえば「簡単指定拒否」という呼称であれば、程度の差こそあれ「この会社の言う簡単とは、この程度か」という拡大解釈も不可能ではない。でも「ワンタッチ」って書いてあったら、一度触れればそれで完結できちゃう、って思わない? 思うよねえ?
【リンク】消費者庁 優良誤認とは
もちろん、「ワンタッチ」は英語「one touch」ではなくすでにニッポン語として確立しているわけなので、その意味が「一度触れれば」というところから意味が拡大して「簡単に」というふうに使われていないとは言わない。でも、できれば「ワンタッチ」と言い切るなら、一度触れたらそれで動作が完結することを指し示すのが適当ではないかと思うのだ。
そういうところから鑑みるに、和製英語「ワン」はすでに「ONE」ではないのでしょうか。広告制作の現場から言わせてもらえば、ちょっとでも疑問がわくような表現は避けたいわけですから、もうちょっと気の利いた言葉を引きずり出せたらよかったのに……と思わずにいられません。
まあ、本家の英語(っつか米語)においても「サノバビッチ!(son of a bitch)」はいつでも単数形で扱われ、相手が複数いても「sons of bitches!」とは言わないわけですけどね。相手が兄弟なら「sons of a bitch!」でいいのかなとか、兄弟でも腹違いならやぱし「sons of bitches!」であるべきなのかなとか、いちいち考えませんよね。
しかし、悪態吐くにもそのように相手のことを思いやることができるようになると、平和な世の中になっていくような気がしますね。